粉飾と合法の狭間 ここで見解の相違が生み出され、企業が誤算という運命に翻弄されることになるのだが・・
税金をごまかしたいから粉飾する。あるいは、利益が出ているように見せかけるために粉飾する。企業にとって粉飾は絶対にあってはならないことであるが、毎年多くの企業がこの粉飾の罠に落ちる。
粉飾(Wikipedia)
粉飾(ふんしょく)とは、業績悪化などの企業や経営陣にとって都合の悪い情報をおおい隠すため、データを改竄(かいざん)したりして、見かけ上問題ないように装う(ドレッシングする)ことを表す経営・会計用語。一方、業績が良いのを隠すのは「逆粉飾」と呼ばれる。ドレッシングとも呼ばれるほか、「ドレ」と略されることもある(隠語)。
企業会計を粉飾する粉飾決算がその代表例である。例えば、カネボウの粉飾決算では、大規模な粉飾決算が行われ、会社の経営を危うくし、これに係わった帆足隆・元社長が有罪にとされたのみならず、中央青山監査法人が業務停止処分を受け、さらに所属の公認会計士が罪に問われる証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)ことになり、会計監査制度の見直しにも波及した。
手法としては、収益計上時期の繰上げ、架空売り上げ計上、不良在庫の隠匿、子会社・関係会社との商品や売上代金・資金のキャッチボール、リース取引の操作などがある。
日経新聞の社説(6月4日)には、
(社説)粉飾を封じ市場から信頼される監査を
オリンパス事件の再発を防ぐにはどうすればよいか?
監査人の任務は、財務諸表の適正さに関する意見表明をすることであって、不正を見抜くことまでは求められていない。企業の内部に立ち入り強制的に調査する権限もない。
粉飾を発見するための研修の充実が必要となる。
(締めくくりの言葉は)世界的に見劣りしない監査の仕組みをつくりたい。
なんとも非力な社説である。とても粉飾などなくなるとは思えない。
一方、合法的な粉飾(粉飾ではないが)もある。減価償却法には定率法と定額法がある。利益が出ているときに定率法で減価償却すると利益の圧縮が可能になる。しかも、固定資産評価額を一気に減らすことができるので、税制上のメリットも大きい。利益が少なくなったときには、減価償却法を定率法から定額法に切り替えると、減価償却額が減るので、利益を上積みすることができる。ただし、減価償却自体の速度は遅くなるので、固定資産評価額は割高となる。
装置産業、例えば製鉄業や化学産業などにおいては、固定資産の評価額が大きいことと景気の変動により利益額が大きく浮沈することがある。このような場合に減価償却法を変更すると、利益も大きく変動する。次の表はぞの実際である。
日経新聞 5月31日
「減価償却」定額法に変更相次ぐ
ホンダ、400億円増益要因 三井化学は100億円
ただし、減価償却法は一旦決めれば簡単には変更できない。次のルールがある。
No.5407 減価償却資産の償却方法の変更手続
[平成23年6月30日現在法令等]
減価償却資産の償却方法を変更しようとするときは、原則として、新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに償却方法を変更しようとする理由などを記載した「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を所轄税務署長に提出して、所轄税務署長の承認を受けなければなりません。
なお、償却方法の変更申請は、その法人が現によっている償却の方法を採用してから相当期間を経過していないとき、又は変更しようとする償却の方法によっては各事業年度の所得の金額の計算が適正に行われ難いと認められるときは、承認されませんのでご注意ください。
(注) その法人が現によっている償却の方法を採用してから3年を経過していない場合は、その変更が合併に伴うものである等特別な理由があるときを除き、相当の期間を経過していないときに該当します。
(法令52、法基通7-2-4)
なお、少し蛇足にはなるが、繰越欠損金なるものがある。これは、赤字を7年間にわたって積み立てることができ、黒字が出たときにその黒字額を積み立てた赤字額と相殺できるというルールである。このルールにより企業は安心して?赤字を出すことができた。本年、税法の改正により赤字を繰越できる期間は9年と長くなったが、この赤字で相殺できるのは利益額の8割までとなった。9年間を通じて、赤字・黒字の凸凹会計よりも、ごくわずかに利益がでる決算の方が企業にとって好ましい形となる。利益額の安定しない大企業は、利益の平準化に務める必要が生じることから、何らかの粉飾めいた会計操作が増えてくるかもしれない。今後、「見解の相違」が増えてくるかもしれない。詳しくはこちら「欠損金の繰越控除制度の見直し」を参照ください。
日経新聞 5月11日
繰越欠損金 赤字持ち越し、黒字相殺
粉飾(Wikipedia)
粉飾(ふんしょく)とは、業績悪化などの企業や経営陣にとって都合の悪い情報をおおい隠すため、データを改竄(かいざん)したりして、見かけ上問題ないように装う(ドレッシングする)ことを表す経営・会計用語。一方、業績が良いのを隠すのは「逆粉飾」と呼ばれる。ドレッシングとも呼ばれるほか、「ドレ」と略されることもある(隠語)。
企業会計を粉飾する粉飾決算がその代表例である。例えば、カネボウの粉飾決算では、大規模な粉飾決算が行われ、会社の経営を危うくし、これに係わった帆足隆・元社長が有罪にとされたのみならず、中央青山監査法人が業務停止処分を受け、さらに所属の公認会計士が罪に問われる証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)ことになり、会計監査制度の見直しにも波及した。
手法としては、収益計上時期の繰上げ、架空売り上げ計上、不良在庫の隠匿、子会社・関係会社との商品や売上代金・資金のキャッチボール、リース取引の操作などがある。
日経新聞の社説(6月4日)には、
(社説)粉飾を封じ市場から信頼される監査を
オリンパス事件の再発を防ぐにはどうすればよいか?
監査人の任務は、財務諸表の適正さに関する意見表明をすることであって、不正を見抜くことまでは求められていない。企業の内部に立ち入り強制的に調査する権限もない。
粉飾を発見するための研修の充実が必要となる。
(締めくくりの言葉は)世界的に見劣りしない監査の仕組みをつくりたい。
なんとも非力な社説である。とても粉飾などなくなるとは思えない。
一方、合法的な粉飾(粉飾ではないが)もある。減価償却法には定率法と定額法がある。利益が出ているときに定率法で減価償却すると利益の圧縮が可能になる。しかも、固定資産評価額を一気に減らすことができるので、税制上のメリットも大きい。利益が少なくなったときには、減価償却法を定率法から定額法に切り替えると、減価償却額が減るので、利益を上積みすることができる。ただし、減価償却自体の速度は遅くなるので、固定資産評価額は割高となる。
装置産業、例えば製鉄業や化学産業などにおいては、固定資産の評価額が大きいことと景気の変動により利益額が大きく浮沈することがある。このような場合に減価償却法を変更すると、利益も大きく変動する。次の表はぞの実際である。
日経新聞 5月31日
「減価償却」定額法に変更相次ぐ
ホンダ、400億円増益要因 三井化学は100億円
ただし、減価償却法は一旦決めれば簡単には変更できない。次のルールがある。
No.5407 減価償却資産の償却方法の変更手続
[平成23年6月30日現在法令等]
減価償却資産の償却方法を変更しようとするときは、原則として、新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに償却方法を変更しようとする理由などを記載した「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を所轄税務署長に提出して、所轄税務署長の承認を受けなければなりません。
なお、償却方法の変更申請は、その法人が現によっている償却の方法を採用してから相当期間を経過していないとき、又は変更しようとする償却の方法によっては各事業年度の所得の金額の計算が適正に行われ難いと認められるときは、承認されませんのでご注意ください。
(注) その法人が現によっている償却の方法を採用してから3年を経過していない場合は、その変更が合併に伴うものである等特別な理由があるときを除き、相当の期間を経過していないときに該当します。
(法令52、法基通7-2-4)
なお、少し蛇足にはなるが、繰越欠損金なるものがある。これは、赤字を7年間にわたって積み立てることができ、黒字が出たときにその黒字額を積み立てた赤字額と相殺できるというルールである。このルールにより企業は安心して?赤字を出すことができた。本年、税法の改正により赤字を繰越できる期間は9年と長くなったが、この赤字で相殺できるのは利益額の8割までとなった。9年間を通じて、赤字・黒字の凸凹会計よりも、ごくわずかに利益がでる決算の方が企業にとって好ましい形となる。利益額の安定しない大企業は、利益の平準化に務める必要が生じることから、何らかの粉飾めいた会計操作が増えてくるかもしれない。今後、「見解の相違」が増えてくるかもしれない。詳しくはこちら「欠損金の繰越控除制度の見直し」を参照ください。
日経新聞 5月11日
繰越欠損金 赤字持ち越し、黒字相殺
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