女子高生 化学実験で強力抗菌剤Ag2O3の非常に簡単な製法を見出し、その抗菌力を決定 成果は論文投稿

化学とは物理学と違い、経験と勘に頼る部分が多い。これは反応を決める要因(パラメータ)が多くあり、おおよそどのような反応が起こると推定できたとしても、誰にもその反応が必ず起こるなどということは保証できない。逆に、予想もしない結果を得たときには、なぜそんな反応が起こったのかと、思いもかけない幸運に恵まれた実験者が、その原因を後から追求してその原理を突き止めるといったことも往々にしてある。

化学とはやってナンボの世界である。古来、錬金術の時代より多くの化学者(山師やペテン師も含む)が多くの実験を積み重ね、累々とした失敗の上に今日の化学が築かれている。

このような事情であるのでいつ誰がどのような新規な反応や新規な化合物を見出しても不思議ではない。今回は高校生がAg2O3の新規製法を見出したという話である。Ag2O3という化合物は、酸素の存在下、高温高圧でしか安定に存在しない化合物である(一番下の図)。これを常圧下、簡単な条件で作り出したこは、素晴らしい。なかでも、一番素晴らしいことは、彼女たちの観察眼である。普通なら見落としそうな、あるいは無視しそうな色の変化を見逃さず、新しい製法の開発に至った。

先に本ブログで報告した例と同じく、女学生の観察力には見習うべきところが多い。

高校化学部の女学生が新発見 しかも英文で査読付き論文に投稿 勝因は几帳面でなかったことと観察眼



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科学技術振興機構賞タイトル:「特異な銀過酸化物”Ag2O3”の抗菌、殺菌特性とその有用性」
学校名:宮城県仙台第二高等学校
メンバー:日置友智、安東沙綾、大村啓貴

<講評>
 今回の研究成果は、国際ジャーナルに発表可能な発見も含めた非常にレベルの高いものであり、特異な銀過酸化物Ag2O3を用いた研究は無機化学分野とバイオ分野の融合した研究は大変素晴らしい。非常に広範な実験から見出した研究成果は、日頃から実験を怠らない日々の努力の賜物である。発表代表者自身、科学全般の見識も非常に高く、今回発表した研究以外への科学的関心も高くあり、今回の研究成果は、今後、バイオ研究分野だけでなく、他の研究分野への波及および発展も多いに期待できるものである。




日本経済新聞 12月4日

効果10倍の抗菌物質、高校生が新製法

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日経 プレリリース 11月24日

東北大、銀過酸化物Ag2O3が持つ高い抗菌活性を発見

【背景】
 銀化合物や銀イオンが細菌やウイルス、真菌などに対する抗菌活性を有することは古くから知られており、特に、第一次大戦以降、スルファジアジン銀(通称 ゲーベンクリーム)が火傷などの薬として重用されてきました。その後、様々な抗生物質の発見により、これら銀化合物の利用は減少傾向にありましたが、近年、抗生物質耐性菌の新たな出現、さらに、銀化合物を含む様々な医療器具やナノパーティクル、日常生活用品における除菌・殺菌剤としての利活用など、再び脚光をあびています。

【研究のインパクト】
 ・Ag2O3 化合物は、国内外の試薬メーカーの市販品は無く、その特性についての報告はほとんど皆無であった。
 ・Ag2O3 は、これまでにNaClO4 とAgClO4 を用いた電気精錬法がFisher ら(2007)により報告されてきたが、本法はより簡易で低コストなものである。
 ・粉末固体として、また、水に対する飽和水溶液(上澄み)としてのいずれにおいても、Ag2O と比較して、より強力な抗菌活性を示す。
 ・酸化作用が強く、食紅などの脱色ができる。
 ・酸化物でありながら電気電導性を有する。





論文(フルペーパー)はこちら

J Mater Sci
DOI 10.1007/s10853-011-6125-0

Ag2O3 clathrate is a novel and effective antimicrobial agent

Saaya Ando • Tomosato Hioki • Takamichi Yamada •
Naoshi Watanabe • Atsushi Higashitani




材料合成プロセスへのオゾンの利用

高温高圧領域でしかAg2O3は安定に存在できない。

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