有用な酸化剤・笑気(N2O) なんと燃料と均一混合してロケット燃料に! その研究者の勇気と成果に乾杯

笑気ガス(化学式N2O、沸点-88℃、融点-91℃)は多才である。下にWikipediaよりその主な用途を転記したが、まずは麻酔であり、この用途は有名である。ついで、ここには記されていないが半導体向けの用途がある。ここには亜酸化窒素という名前で記されている。同じ化合物である。

料理にも利用される。Wikipediaのエスプーマ(下記参照)という部分がそうだ。料理に泡を入れるのに用いられる。代表的なものとしてはソフトクリームやカプチーノコーヒーなどがある。スターバックスにおいて提供されるコーヒーにはこの笑気が使われている。笑気は二酸化炭素(酸性化合物、水に溶ければ炭酸)で泡立てるのと比べ、食品の味を変化させないのでこの用途に用いられる。

そして酸化剤としての用途だ。N2O分子の中に酸素原子(O)を持っているので、この部分が酸化に寄与する。そして、分子中のN2部分は燃料の酸化後は窒素分子(N2)として残るので、これがエンジンシリンダーの駆動やロケットエンジンのガス推進力の一部として利用される。N2OがN2とOに分解するときに分解に伴い熱を発生させるので、これもエンジン出力にとってはプラスとなる。

さらに、ハイブリッドロケット(固体燃料+液体酸化剤)の酸化剤としても利用される。JAXAのホームページには次のように記されている。

    ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが使われています。
    初期のハイブリッドロケットには石炭も使われました。酸化剤としては、
    やはり純粋な酸素が使えることが魅力です。それ以外にも、笑気ガス
    だとか、過酸化水素なども使われています。

さて、前置きが長くなったがいよいよ本題です。科学においては、一般的には燃料と酸化剤を一緒に混合することははない。このようなことをするのは、火薬くらいなものです。たとえばロケット花火。硝酸カリウム(KNO3)と炭素、硫黄を75:15:10に混ぜ合わせると一般的な黒色火薬が出来上がり、これを推進剤として利用する。用途により、この3者の混合割合は種々変化させる。

今回、この危険な混合をした「一酸化窒素と燃料とが混合されてなるモノプロペラント」(特表2011-502935、1月27日公開)と題した特許を見つけました。これは、米国のファイアースターエンジニアリングという会社が日本を含め世界の多くの国々に出願した特許です。

特許請求の範囲には、燃料としてはエタン、エチレン、アセチレンあるいはこれらから選ばれた組み合わせを、酸化剤としては笑気を用い、この燃料と酸化剤を混合してロケット推進剤(プロペラント)とする。普通だと、燃料と酸化剤は別々のタンクに仕込み、ということになるのですが、これを一緒にまぜてしまいましたので、モノプロペラントです。凝固点は-77℃以下、比推力(ISP)は300~345秒より大きいと記されている。燃料、笑気ともに圧縮していくと液化して液体状態となるので、このモノプロペラントもロケット機体中に液体として充填される。

この燃料と酸化剤を一緒にしてロケット燃料としようなどという発想は、常人にはそうそうできるものではありません。さらに、それを実行に移すことなど、強い信念と実行力を持っていなければできないでしょう。多くの組み合わせを実験し、きっと途中で制御不能の爆発も起こったことと思いますが、必要なデータを取得し、その結果を世界特許にまとめ上げる。この特許に記されている4名の発明者には敬意を表します。


亜酸化窒素(N2O、Wikipedia)、

窒素酸化物の一種で沸点が-88℃の気体。吸入すると顔が笑ったように引きつることから笑気ガス(しょうきガス)とも呼ばれる。

硝酸アンモニウムを約250℃で注意深く融解させると、分解して一酸化二窒素が発生する。
  2 NH4NO3 → N2O + 2 H2O

酸化炭素の約300倍(100年GWP(100年間で発揮する温室効果))の温室効果ガスであり、京都議定書でも排出規制がかけられた。

用途
・歯科治療時の鎮静用として酸素とともに吸入を行う。
 これにより麻酔注射やドリル研磨、抜歯等の恐怖心が緩和される。
・手術の際の全身麻酔に用いる。→詳しくは笑気麻酔の項を参照。
・車のエンジン内に吸気して、爆発的なエネルギーを得ることが出来る。仕組みとしては、酸素を通常よりも燃焼室に押し込む事と気化熱による吸気温度低下により馬力アップを図るもの。第二次世界大戦中に戦闘機に使用され、戦後暫く影をひそめていたがレースカーが使用を始め一般にも普及している。代表的な製品に「ナイトラス・オキサイド・システム (NOS)」などがある。
・さまざまな食材をムース状に加工するエスプーマ調理用のガスとして。
・宇宙開発において、アポジキックモータースラスターの燃料として、ヒドラジン系に変わる材料としてエタノールとの組み合わせが検討されている。自己着火性がないため点火装置が必要になり、構造が複雑になる上に比推力も劣るが、毒性が低いため安全性が高く扱いやすいこと、融点が低く宇宙空間でも凍結しないことが利点とされている。



比推力(Wikipedia)

比推力(ひすいりょく、Specific impulse/Isp)は主にロケットエンジンの燃料効率を示す尺度であり、推進剤流量に対する推力の大きさを示す。定義は「推力/(推進剤流量・重力加速度)」で、単位は秒である。ノズルの適正膨張を仮定すれば、「噴射速度を重力加速度で割った物」という物理的な意味を持つ。

言葉を換えれば、

「単位重量の推進剤で単位推力を発生させ続けられる秒数」
となり、これは例えば「1トンの燃料を燃やすことで1トンの物を重力に抗して空中に支えるだけの垂直推力を維持できる秒数」といえる。この場合、推進剤以外のロケットの重量は全く関係が無く、燃焼に伴って推進剤が減ることも考慮しない。

   固体燃料ロケット:200-300秒
   液体燃料ロケット:300-460秒
   ラムジェットエンジン:500-1500秒
   ターボジェットエンジン:2300-2900秒
   レシプロエンジン:3500-5500秒
   原子力ロケット:最大1,000秒(推定)
   電気推進:数千秒-10,000秒(推定)
   核融合推進:数万秒(推定)


         

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