カーボンナノチューブで日本人のノーベル賞受賞なるか!? 確実といわれながらもグラフェンに先を越され
カーボン(炭素)にはいくつかの構造がある。よく知られているところでは、無定形、層状(グラファイト)、格子状(ダイヤモンド)に代表される構造だ。そして新たな構造として、サッカーボール型をしたもの(フラーレン)、平面状をしたもの(グラフェン)、そして今回のチューブ状をしたものがある。このうち、フラーレンおよびグラフェンについてはすでにノーベル賞が与えられ、残すはチューブ状をしたカーボンナノチューブにノーベル賞の期待が集まる。発見者は日本人である。
ノーベル賞も原理の発見は重要であるが、特許と同じく、産業上の、端的に言えば人類の幸福への貢献が問われる。このたび、カーボンナノチューブの大量生産および機能の向上が可能となり、しかもその価格は従来の1/1000となるとの産総研からの報告は、いよいよ実用化へのカウントダウンが始まったものと感じられる。日本ゼオンもサンプル出荷を開始した。
日本の科学技術も捨てたものではない。私たちがここ20年間に失っていたものは、「自信」という漢字2文字ではないだろうか。
過去のブログ:本年のノーベル賞はグラフェンンに
大澤映二先生が考える科学のあるべき姿とは
産総研 2月14日
大量生産で単層カーボンナノチューブの研究開発を加速
ポイント
•日産数百グラムオーダーの単層カーボンナノチューブの生産能力を実証
•単層カーボンナノチューブの本格的な応用を展開
•産総研の開発したスーパーグロース法による単層カーボンナノチューブの研究開発を加速
独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)ナノチューブ応用研究センター【研究センター長 飯島 澄男】は、平成21年度の経済産業省の補正事業により、日本ゼオン株式会社の協力を得て、スーパーグロース法による高純度単層カーボンナノチューブの大量生産設備の開発を進め、この度、一日あたり600 gの生産能力を実現した。従来の実験室レベルの合成装置はバッチ式で、生産量は一日あたり1 g程度に止まっていたが、飛躍的に生産能力を向上させた。
得られた単層カーボンナノチューブの形状は、これまで研究開発設備で製造した試料とほぼ同等であり、単層カーボンナノチューブの持つ優れた機能を最大限発揮した透明導電膜、太陽電池、薄膜トランジスタ、キャパシタ等への応用に弾みがつく。
スーパーグロース法による工業規模の大量生産装置では金属シート上に触媒層をコーティングしており、これをCVD(化学気相成長)炉に送り込むことで基板上に単層カーボンナノチューブを連続的に成長させることができる。種々の合成条件を最適化することで、幅50 cmの金属シートの全面に単層カーボンナノチューブが均一かつ緻密に成長する。成長した単層カーボンナノチューブは、剥離装置により自動で根元から切断することで基板から分離・回収する。スーパーグロース法で合成される単層カーボンナノチューブは他の方法によるサンプルと比べはるかに高純度であるため、特に精製することなく多くのアプリケーションに供することができる。生産能力は一日あたり600 g以上であり、本格的な工業規模での生産に道を拓くことができた。
◆スーパーグロース法
単層カーボンナノチューブの合成手法の一種である化学気相成長法(CVD法)において、水分を極微量添加することにより、その合成効率を大幅に向上させた手法である。これにより、不純物が従来の1/2000の超高純度、従来手法の500倍の長さに達する単層カーボンナノチューブを得ている。
カーボンナノチューブ(Wikipedia)
カーボンナノチューブの発見
1991年、日本の飯島澄男(当時NEC筑波研究所。現NEC特別主席研究員、産業技術総合研究所ナノチューブ応用研究センターセンター長、名城大学大学院理工学研究科教授)によって、フラーレンを作っている途中にアーク放電した炭素電極の陰極側の堆積物中から初めてTEM(透過電子顕微鏡)によって発見された。この業績から飯島はノーベル賞候補のひとりといわれている。
カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーに対する最初の観察と研究は、1952年のソビエト連邦までさかのぼる。この時点で既に2人のロシア人科学者によってカーボンナノチューブと思われるTEM写真と文献が書かれていた。しかし、その詳細な構造が解明されて材料としての重要さが認識され、量産に至るのは1991年の飯島氏による再発見の後のことである。
1979年にはペンシルベニア州立大学の会議においてジョン・エイブラハムソンによりアーク放電によって低圧の窒素雰囲気中に生成されたカーボン繊維の特殊性について述べており(文献発表は1999年)、1981年にはソビエト連邦の研究者らによって、カーボンナノチューブの表面に当たるグラフェンシートの幾何学構造についての考察文献が発表されている。1987年にはテネット・ハワード・Gによってカーボンナノファイバーの直径が3.5nmから70nmの間とされる事やその応用性について述べられている。(伝右の注:ロシア出身の科学者2名がグラフェンで2010年のノーベル賞を受賞した)
スーパーグロースCVD法
スーパーグロースCVD法によって製作されたSWNTシート(カーボンナノチューブ黒体)のSEM画像産業技術総合研究所ナノカーボン研究センターにおいて、畠賢治、飯島澄男らによりスーパーグロースCVD法 が発表された。CVD法の一種である本法は通常の気相合成雰囲気中に極微量の水分を添加する事により触媒の活性及び寿命が大幅に改善され、高効率、高純度な単層カーボンナノチューブを得ることができる
毎日jp 2月15日
日本ゼオン(4205) 高品質ナノチューブ量産で株価上昇。
日本ゼオン(4205)と産業技術総合研究所は2月14日、高品質なカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)のサンプル出荷を4月に始めると発表した。
純度99%以上という高品質のナノチューブを1日当り600グラム生産する。従来は1日数グラム程度の生産が限界だった。
現状は1グラム当り数万円〜数十万円と高いので産業応用が進んでいないが、新開発の生産技術を活用やノウハウを蓄積し生産コストを従来の1000分の1の1グラム数十〜数百円に下げる計画。(W)
ノーベル賞も原理の発見は重要であるが、特許と同じく、産業上の、端的に言えば人類の幸福への貢献が問われる。このたび、カーボンナノチューブの大量生産および機能の向上が可能となり、しかもその価格は従来の1/1000となるとの産総研からの報告は、いよいよ実用化へのカウントダウンが始まったものと感じられる。日本ゼオンもサンプル出荷を開始した。
日本の科学技術も捨てたものではない。私たちがここ20年間に失っていたものは、「自信」という漢字2文字ではないだろうか。
過去のブログ:本年のノーベル賞はグラフェンンに
大澤映二先生が考える科学のあるべき姿とは
産総研 2月14日
大量生産で単層カーボンナノチューブの研究開発を加速
ポイント
•日産数百グラムオーダーの単層カーボンナノチューブの生産能力を実証
•単層カーボンナノチューブの本格的な応用を展開
•産総研の開発したスーパーグロース法による単層カーボンナノチューブの研究開発を加速
独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)ナノチューブ応用研究センター【研究センター長 飯島 澄男】は、平成21年度の経済産業省の補正事業により、日本ゼオン株式会社の協力を得て、スーパーグロース法による高純度単層カーボンナノチューブの大量生産設備の開発を進め、この度、一日あたり600 gの生産能力を実現した。従来の実験室レベルの合成装置はバッチ式で、生産量は一日あたり1 g程度に止まっていたが、飛躍的に生産能力を向上させた。
得られた単層カーボンナノチューブの形状は、これまで研究開発設備で製造した試料とほぼ同等であり、単層カーボンナノチューブの持つ優れた機能を最大限発揮した透明導電膜、太陽電池、薄膜トランジスタ、キャパシタ等への応用に弾みがつく。
スーパーグロース法による工業規模の大量生産装置では金属シート上に触媒層をコーティングしており、これをCVD(化学気相成長)炉に送り込むことで基板上に単層カーボンナノチューブを連続的に成長させることができる。種々の合成条件を最適化することで、幅50 cmの金属シートの全面に単層カーボンナノチューブが均一かつ緻密に成長する。成長した単層カーボンナノチューブは、剥離装置により自動で根元から切断することで基板から分離・回収する。スーパーグロース法で合成される単層カーボンナノチューブは他の方法によるサンプルと比べはるかに高純度であるため、特に精製することなく多くのアプリケーションに供することができる。生産能力は一日あたり600 g以上であり、本格的な工業規模での生産に道を拓くことができた。
◆スーパーグロース法
単層カーボンナノチューブの合成手法の一種である化学気相成長法(CVD法)において、水分を極微量添加することにより、その合成効率を大幅に向上させた手法である。これにより、不純物が従来の1/2000の超高純度、従来手法の500倍の長さに達する単層カーボンナノチューブを得ている。
カーボンナノチューブ(Wikipedia)
カーボンナノチューブの発見
1991年、日本の飯島澄男(当時NEC筑波研究所。現NEC特別主席研究員、産業技術総合研究所ナノチューブ応用研究センターセンター長、名城大学大学院理工学研究科教授)によって、フラーレンを作っている途中にアーク放電した炭素電極の陰極側の堆積物中から初めてTEM(透過電子顕微鏡)によって発見された。この業績から飯島はノーベル賞候補のひとりといわれている。
カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーに対する最初の観察と研究は、1952年のソビエト連邦までさかのぼる。この時点で既に2人のロシア人科学者によってカーボンナノチューブと思われるTEM写真と文献が書かれていた。しかし、その詳細な構造が解明されて材料としての重要さが認識され、量産に至るのは1991年の飯島氏による再発見の後のことである。
1979年にはペンシルベニア州立大学の会議においてジョン・エイブラハムソンによりアーク放電によって低圧の窒素雰囲気中に生成されたカーボン繊維の特殊性について述べており(文献発表は1999年)、1981年にはソビエト連邦の研究者らによって、カーボンナノチューブの表面に当たるグラフェンシートの幾何学構造についての考察文献が発表されている。1987年にはテネット・ハワード・Gによってカーボンナノファイバーの直径が3.5nmから70nmの間とされる事やその応用性について述べられている。(伝右の注:ロシア出身の科学者2名がグラフェンで2010年のノーベル賞を受賞した)
スーパーグロースCVD法
スーパーグロースCVD法によって製作されたSWNTシート(カーボンナノチューブ黒体)のSEM画像産業技術総合研究所ナノカーボン研究センターにおいて、畠賢治、飯島澄男らによりスーパーグロースCVD法 が発表された。CVD法の一種である本法は通常の気相合成雰囲気中に極微量の水分を添加する事により触媒の活性及び寿命が大幅に改善され、高効率、高純度な単層カーボンナノチューブを得ることができる
毎日jp 2月15日
日本ゼオン(4205) 高品質ナノチューブ量産で株価上昇。
日本ゼオン(4205)と産業技術総合研究所は2月14日、高品質なカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)のサンプル出荷を4月に始めると発表した。
純度99%以上という高品質のナノチューブを1日当り600グラム生産する。従来は1日数グラム程度の生産が限界だった。
現状は1グラム当り数万円〜数十万円と高いので産業応用が進んでいないが、新開発の生産技術を活用やノウハウを蓄積し生産コストを従来の1000分の1の1グラム数十〜数百円に下げる計画。(W)
この記事へのコメント
このトライボケミカル反応にもノーベル物理学賞で有名になったグラフェン構造になるようになる機構らしいが応用化の速度にはインパクトがある。