伊藤ハム 井戸水中のシアン化合物は自ら作り出したものか? その根拠

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  伊藤ハムの事例より学ぶ企業風土と社員の幸せ
  2月1日より30回シリーズ 掲載を開始しました


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問題のシアンの生成原因は、井戸水中に存在する有機化合物(前駆体と呼ぶ)と、井戸水の消毒に使用した次亜塩素酸ナトリウムが反応して生じたのではないかと考えられる。

      第1回 10月27日のブログ   シアン化合物が検出される
      第2回 10月28日のブログ   塩素酸も検出される
      第3回 本日のブログ       シアン化合物は殺菌工程で生じたのでは?
      そしてことの顛末 40日を経てやっと原因が確定された!
新聞記事より事件の経過をまとめてみた
12月11日に伊藤ハムがホームページ上で事件の経過を報告したが、何かがおかしい!

千葉県衛生局の井戸水検査ではシアン化合物が検出されなかった旨は第1回で記した。同じ千葉県衛生局より興味深い論文が発表されていた。これは、平成15年5月30日付の厚生労働省令により、水道法水質基準が改正されるのに伴い、シアンの分析方法も変わるので、新分析法の確認をし、得られた知見を公表したものである。

  「井戸水の塩素消毒によって生成するシアン化物イオン及び塩化シアンについて」(2004年)
   http://www.pref.chiba.jp/syozoku/c_eiken/risousu/report/eisei_h/28-p23.pdf

この報告によると、シアン化合物の検出は、従来は「ピリジンピラゾン吸光光度法」が用いられていたが、より検出感度の高い「イオンクロマトグラフ-ポストカラム吸光光度法」となる。

水質基準では「シアン化物イオン(CN)および塩化シアン(CNCl)」が0.01mg/L以下となっている。検討結果によると、旧分析方法では井戸水よりシアンが検出されない場合でも、新分析方法で微量ではあるがシアンが検出される例が多くみられた。

ここがポイントであるが、新分析法でCNおよびCNClが全く含まれない井戸水に次亜塩素酸ソーダを加えるとCNおよびCNClが検出されるようになった。

この反応は次の通りである。

    前駆体(ある有機物) → 塩素によりCNイオンの発生 → 塩素によりCNClに変化

報告中に示されているデータは下表のとおりである。上の表が用いた井戸水(次亜塩素酸処理なし)の分析結果で、No.7とNo.9のKMnO4値およびTOC値は大きな値となっている。TOCはTotal Organic Carbonの頭文字をとったもので、この値が大きいと、有機化合物(有機化合物は炭素を含むのが特徴)を高い濃度で含んでいることを示している。

下の表で、KMnO4値およびTOC値が大きい場合(No.7とNo.9)、高い濃度のCNイオンおよびCNClが検出されている。No.9のCNClが18.4μg/Lは0.0184mg/Lのことで、水質基準の0.01mg/Lを超えた値である。

原子量というものがある。これは炭素を基準の12として各元素の質量比をあらわしたものである。炭素の原子核はは陽子6個と中性子6個よりできているので合計12.窒素は陽子7個と中性子7個よりできているので合計14。塩素は(陽子17個と中性子18個の合わせて35)と(陽子17個と中性子20個の合わせて37)の二通りの重さを持つものが3:1で存在しているので、その平均値は35.5である。

      CN (12+14=26) → CNCl (12+14+35.5=61.5)

とCNイオンが塩素と反応しただけでCNCl となり、その重量は2.4倍へと増加する。水質基準は「シアン物イオン(CN)及び塩化シアン(CNCl)」の合計が0.01mg/Lと重さで規定されているので、塩素を含むことにより規制物質の濃度は急激に大きくなることが分かる。

以上、シアン化合物の発生のメカニズムを見てきたが、残念ながら問題を引き起こした前駆体は存在するに違いないと、まだ推量の域である。この前駆体が井戸水から由来するものか、作業上のトラブルで誤って井戸水に混入したものかを見極める必要がある。

また、発表された、伊藤ハムのシアン化合物の量は、基準値の2~3倍とあるだけで、CNイオンがいくら、CNClがいくらとの報道が必要であったと考えられる。

伊藤ハムとしては、問題が生じたときに速やかに三現主義(現場・現物・現実)により、ことの真相を解明する努力をする必要があったと。そうすることで、くみ上げた水のKMnO4値は? TOCは? CNイオンが含まれたか? CNCl が含まれたか? が明らかとなり、問題発生原因に大きく近づけた。

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